FX市場で円高になると、海外での資産が割安となり、海外投資が活発化します。M&A(企業買収)もしやすくなりますし、海外における株式投資、債券投資でも有利です。
企業・個人にかかわらず、資金は海外に流れ出します。
これと反対に、FX市場で円安になった場合では、国内の資本・資金は国内にとどまらざるをえません。むしろ海外進出の企業では、この期をとらえて日本本国に向けて送金が活発化するわけです。
海外で得た外貨建ての収益は、円安によって多くの円を得ることができるため、有利になるからです。
空洞化現象ということがよく言われます。FX市場で為替の円高などによって、日本国内での製品の製造がコスト的に合わなくなり、工場を海外へ移転します。
それによって日本国内に工場がなくなるだけでなく、技術者や製造に関するノウハウもしだいに失われていきます。
空洞化現象の一番恐ろしいのはこの点です。一時期、猛烈にFX市場で円高にふれていた為替が仮に円安に戻ったとしても、いったん日本を去った生産を再び国内に呼び戻すのは、ほとんど不可能と言えます。
90年代、日本では自動車・機械・繊維などさまざまな産業分野で生産拠点の海外移転が進みました。
しかし、アメリカは空洞化という点では日本の先輩格です。雑貨・繊維・家電など、大半の製品が輸入品に代わっています。
90年代のアメリカはそうした工業製品は海外に任せ、コンピュータやIT、サービス産業などで好況を謳歌しました。しかし現在、そうしたIT需要も曲がり角です。
まるで日本の将来の姿を見る思いです。
日本やアメリカなど世界経済のリード役をつとめる国では、新しい産業・新しい技術にたゆまないチャレンジが必要です。うしろからは、低コストで国際競争力のあるアジア諸国が追ってきているからです。